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慶應義塾OCW >> コース一覧 >> 経済学部 >> 廃棄と汚染の経済学(2004春-秋学期)

廃棄と汚染の経済学(2004春-秋学期)
【第10講義:逆選択とパートナーシップ(2)】

10.1. 優良業者の悲哀
    10.1.1. シュレッダー・ダスト(shredder residue)問題
      ●使用済み自動車(end-of-life vehicle)は解体・再資源化されるが、最終残余物はシュレッダー・ダストとして埋め立てられていた。この一部が豊島に不法投棄された。
      ●シュレッダー・ダストは、鉛、水銀などの有害物質を含んでいる恐れがあるので、適正処理が必要。
      ●これまでシュレッダー・ダストのほとんどが、管理型処分場に埋め立てられていたが、管理型処分場が枯渇するのに応じて処理料金が高騰した。
      ●このため、かつては有価物であった使用済み自動車の廃車ボディーも逆有償になるところも出てきた。
    10.1.2. 規制強化の帰結 -優良業者が駆逐される可能性?
      ●豊島の不法投棄事件を機に、かつては安定型処分場で埋め立てられていたシュレッダー・ダストが管理型処分場でしか埋め立てられないようになった。
      ●しかし、管理型処分場は枯渇し始めているので料金も高騰しており、この費用を惜しもうとすると不適正処理・不法投棄になる。
      ●費用を惜しんで不適正処理・不法投棄する不良業者に較べて、適正処理する優良業者の費用は高く、このため仕事が取れないことになる。
    10.1.3. 排出者責任 -渡してしまえばそれでおしまいか
      ●従来、廃棄物の処理を委託する主体は、渡してしまえば後はその処理内容について注意を払わなかった。
      ●しかも処理内容についての情報は非対称的であるから、委託した業者が不良業者か優良業者かを判断することが難しかった。
      ●排出者も、委託した業者の処理内容について情報を集める努力は必要である。そうしないと、逆選択による優良業者の駆逐は避けられない。

10.2. 競争と協調
    10.2.1. バッズの取り引きで競争は必要か
      ●バッズの取り引き・処理市場においても競争は必要である。ただ、無制約な自由参入があると、情報の非対称性を利用した不良業者が市場に残ってしまい、優良業者が駆逐されてしまう。
      ●自由参入をある程度制約しても競争は可能である。優良業者のみを市場に残し、不良業者を駆逐する法的枠組みのなかでの競争が必要である。
      ●実際、廃棄物の処理においては、業の許可、施設の許可なくして市場に参入できない。しかし、こうした許可制度だけでは逆選択の問題を解決できない。
    10.2.2. 水平的協調
      ●バッズの発生・排出抑制のためには、協調的行動も必要。協調には水平的協調と垂直的協調がある。
      ●同業者どうしの協調が水平的協調。例えば、飲料容器メーカーが協調して統一容器を使えば、リターナブル容器として使える可能性が高くなる。
      ●逆に、各飲料メーカーが勝手に独自の飲料容器を使い始めると、リターナブルのシステムは崩れ、使用済み飲料容器はバッズになってしまう。
      ●家電リサイクル法成立に前後して、家電メーカーは協力して家電リサイクルビジネスを始めた。これも水平的協調の一つの例。
    10.2.3. 垂直的協調
      ●生産物連鎖上にある異業種間の連携も、バッズの発生・排出抑制のために必要。
      ●ある自動車メーカーは、地域の解体業者と協力しつつ、シュレッダー・ビジネスを始めた。
      ●また、家電リサイクル法の下、家電メーカーは地域の廃棄物処理業者と連携して、使用済み家電製品の回収システムの確立、再資源化の促進努力を行った。
      ●垂直的協調が進むと、バッズが発生しにくいような製品作りも可能になる。
    10.2.4. パートナーシップと独占
      ●市民のビン・缶・古紙などの分別排出は、バッズの排出抑制につながる。
      ●静脈経済では、分断型の行動様式が続くと、バッズの発生・排出抑制は困難であり、何らかのパートナーシップが必要となる。
      ●しかし、パートナーシップが独占や談合を助長してはならない。そのために、パートナーシップを組む場合には、(1)情報の積極的開示、(2)説明責任(accountability)の遂行、(3)バッズの適正処理・再資源化費用の明確化・ルール作り、が必要になる

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