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慶應義塾OCW >> コース一覧 >> 経済学部 >> 廃棄と汚染の経済学(2004春-秋学期)

廃棄と汚染の経済学(2004春-秋学期)

【第14講義:環境保全のトレード・オフ(2)】

14.1. 環境要素どうしのトレード・オフ
    14.1.1. 環境要因のバッティング
      ●経済と環境だけではなく、環境要素同士がトレード・オフの関係にあることがある。
      ●自動車の燃費を向上させようとすると、NOxが増加してしまう。
      ●地域的大気環境改善のためにはディーゼル車よりガソリン車の方が良いが、地球温暖化防止のような大域的環境改善のためにはディーゼル車の方がガソリン車よりも良い。
      ●燃費改善のために自動車に複合素材を多用すると、使用済みになったときの適正処理・リサイクルが難しくなる。
    14.1.2. 廃棄物焼却の問題とダイオキシン問題
      ●昭和40年代のごみ戦争に直面して、日本はごみ減量・減容化ために焼却主義をとった。日本のごみの焼却処理率は約80%であり、世界的にも高い率である。
      ●しかし、燃焼管理の行き届かない焼却処理をするとダイオキシンを発生させることになる。
      ●現在技術的な対応や燃焼管理などでダイオキシン発生を抑えることも可能だが、ごみの減量・減容化とダイオキシンの発生は、トレード・オフの関係になることもある。
    14.1.3. バッズとバッズの連鎖
      ●あるバッズの存在は他のバッズの存在と密接な関連にあることがある。あるバッズの削減は、他のバッズの増加をもたらすかもしれない。
      ●バッズ同士にトレード・オフがある場合、どちらのバッズを削減するか評価しなければならない。
      ●そのためには、バッズに対する評価の重み付けが必要だが、実際それは難しい。
    14.1.4. 拡張されたフロンティア
      ●効率性の限界をあらわすフロンティアは、複数の環境要素を入れたものに拡張できる。
      ●経済-環境要素1-環境要素2の3次元のフロンティア上の 1点を取ると、その接平面の傾きは、それぞれの要素の評価付けを表すことになる。
      ●フロンティア上の点を選ぶためには、社会的な合意が必要である。

14.2. 環境評価の難しさ

    14.2.1. すぐパニックになる日本人
      ●環境要素同士のトレード・オフがる場合の選択では、冷静な評価が必要なのだが、日本人はマスコミの報道によってパニック的に対応することがある。
      ●一つの環境要素だけに気をとられて対応すると、他の環境要素を無視することにもなりかねない。
      ●特にバッズの発生・排出抑制では、包括的に考えて対処することが必要である。
    14.2.2. 環境評価に関わる難しさ
      ●環境に関わる評価には3つの困難性が伴う。
      ●まず第一にバッズの影響に関する評価が難しいということが挙げられる。
      ●外部不経済の影響が明確にわからないようなバッズの評価には更に不確実性という難しい要因が加わる。
      ●仮に不確実性がなくても、異なった環境要素の比較をすることは難しい。
    14.2.3. ハイ・ディマンダーとロー・ディマンダー
      ●包括的評価を困難にする第二の問題は、ハイ・ディマンダー(high-demander)とロー・ディマンダー(low-demander)に関わる問題である。
      ●ある環境要素を高く評価するハイ・ディマンダーと低く評価するロー・ディマンダーがいる場合、環境要素の重み付けは異なる。
      ●市場は異なった重み付けを調整して需給をバランスすることができるが、個人によって評価の異なる環境要素の場合、どれだけ保全するかを決めることは難しい。
    14.2.4. 政策的意思決定主体の分断
      ●たとえ環境要素について統一的な指標が作られ、不確実性がないとしても、異なった個人間の環境評価を調整する意思決定組織が欠如している場合、包括的な評価は難しい。
      ●行政も縦割りになっており、包括的環境評価の主体にはなりえていない。
      ●NPOなどもまだそのような組織になりえていない。

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