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慶應義塾OCW >> コース一覧 >> 経済学部 >> 廃棄と汚染の経済学(2004春-秋学期)

廃棄と汚染の経済学(2004春-秋学期)
【第18講義:環境制約と経済成長(2)】

18.1. 経済発展経路の転換にかかわる問題
    18.1.1. 調整費用と経済成長 -転換期の問題
      ●バッズの発生・排出抑制のメカニズムの組み込まれた経済に向かって発展経路を変えるためには、ノウハウの蓄積や人的資本の蓄積なども必要になる。
      ●発展経路の変更に伴う調整費用が大きい場合、経済活動に一時的にマイナスの影響が生じるかもしれない。
      ●一時的に人的資本やノウハウの蓄積が増加すると、必要資本係数は大きくなり、適正成長率は下がるかもしれない。
      ●景気の低迷期にこのようなことが起きると、均斉成長のバランスは崩れ、経済の不安定性が助長される恐れがある。
      ●こうしたマイナスの影響を最小限にとどめるためには、環境の付加価値が市場で早く実現するような経済措置が必要である。
    18.1.2. 多部門経済における発展と成長
      ●産業構造が変化しつつある経済において、集計指標であるGDPやその増加率をもって経済のパフォーマンスを測ると、実態を見誤る恐れがある。
      ●産業は多くの部門からなっており、縮小する部門もあれば、拡大する部門もある。
      ●動脈産業の内部でも構造の変化があるが、静脈産業の内部においても構造に変化がある。
      ●構造変化のある転換期にはビジネス・チャンスも存在する。バッズの発生・排出抑制に資する企業・産業が利益を得るような経済になりつつある。そのような企業・産業が成長する。
    18.1.3. 新しい経済経路での技術進歩
      ●新しい経済発展経路には、新しい技術進歩がある。それをものにした企業・産業が今後発展する。
      ●静脈産業にはまだまだ技術進歩の余地がある。動脈産業の技術と比べると、発展の状態は遅い。しかしこのことは、かえって静脈産業には技術進歩の余地が大きいことを示す。
      ●動脈技術が静脈経済に転用され、新しい付加価値を稼ぎ出すことも起きている。こうして静脈技術も進歩してゆく。
    18.1.4. 景気変動と静脈経済
      ●ハロッドの経済成長理論によると、資本主義経済は不安定な経済成長経路をたどるとされている。
      ●しかし現実の経済にはこの不安定性を修正するようなメカニズムが備わっている。
      ●静脈経済は、人間の基本的なニーズを満たす経済行為を行う場であり、景気の変動を受けにくい。
      ●静脈経済を、景気の自動安定装置(built-in-stabilizer)として活用することも考えられる。

18.2. 経済成長の神話vsゼロ成長の神話
    18.2.1 ゼロ成長の神話
      ●かつて「環境を保全するために経済成長をゼロにすべき」という議論が流行った。
      ●しかし、経済成長をゼロにしたら環境が保全できるという根拠はどこにもない。
      ●経済成長率は資本ストックの上昇率、労働人口の上昇率、全要素生産性(技術進歩上昇率)に分解される。更に全要素生産性の上昇率は教育の質の向上、労働環境の向上、知識の発展などに分解される。
      ●つまり人間の知識の質や教育が向上すると、経済成長率はプラスになるのである。
      ●経済成長率信仰も神話だが、「ゼロ成長」という考え方も一つの神話に過ぎない。
    18.2.2. 所得の増加と環境志向の関係
      ●一般に所得水準も低くなると、人々の環境への評価付けも低くなる。
      ●環境という豊かさと物質の豊かさは代替関係にある場合が多い。
      ●経済が一定の発展段階に達すると人々は環境の価値に気付き、国は環境政策を採り始める。
      ●環境を保全するためには、経済が一定の成熟段階に到達することが必要である。
    18.2.3. 逆U字型仮説
      ●経済の発展過程で、経済成長と環境保全が両立することを示す研究成果がある。
      ●それは環境クズネッツ曲線(Environmental Kuznets’ Curve)と呼ばれるもので、所得が一定水準を越えると、ある環境指標が改善される関係を示す曲線である。
      ●しかし環境クズネッツ曲線は、ある環境指標には当てはまるが、他の環境指標には当てはまらない場合もある。また、理論的根拠も明らかでない点に問題もある。

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