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近代日本と福沢諭吉(2004秋学期)
【テーマ03-1:近代日本法の形成と福澤諭吉(1)-福澤諭吉の法思想】

● はじめに

  • 法律家ではなかった福澤の法思想を語る方法…
  • なぜ福澤と法を語るのか?
    「国民の権利・義務、また個人の尊重を説き…個人としての経済の独立と国家独立の基礎となるべき富国強兵を説き、資本主義発達の思想的根拠を与えた…」 (「世界人名事典」日本編 東京堂出版)
    ※「一身独立して一国独立する」 →国民国家、主権国家の創出→不平等条約の改正(領事裁判権の撤廃・関税自主権の回復)→日本の近代化と「法」の整備
  • 2つのロースクールを結ぶもの:法的主体の創出(≪教育≫の位置づけ)
    2004(平成16)年4月法科大学院の開設(司法制度改革/裁判員・法律家の増員・使いやすい司法制度…)
    1890(明治23)年1月慶應義塾大学部法律科設置

1 福澤による西洋法概念の翻訳方法-「ケンリ」をめぐって

  • 日本における体系的西洋法認識の出発点:漢訳本を解しての訳語鋳造
    『万国公法』(丁?良訳 1864・原題;H. Wheaton, Elements of International Law, 1836)
    『万国公法』(西周助訳 慶應4)、『泰西国法論』(津田真一郎訳 同)
    『仏蘭西法律書』(箕作麟祥訳 明治2-7 全40冊)
      →(福澤:元治元年/1846~ 外国奉行支配調訳次席翻訳御用)  
  • 「アメリカ独立宣言」(1776)の翻訳例(『西洋事情初編』巻之二 慶應2)→人権思想的センス
    ※陪審制度への注目(『同』巻之三)
    「英国にては裁判役の独断にて罪人を吟味し刑罰に行ふことを得ず。必ず立合のもの有て裁判の正否を見て之を議論し、罪人も其罪に伏し、立合のものも其裁判に付き異論なきに至て、初て圭に処するなり」
  • 「権利(理)」と「通義」-2つのテクストの「文体」比較から
    「英吉利法律学校開校式の祝辞」(明治18)
  • 福澤による法文化摂取の方法:徹底した通俗化の方法/市井への視座(その低さ)
    「法律の文字」(明治22)
    「福澤全集緒言」(明治31)「元来文字は観念の符号に過ぎざれば、観念の形なき所に影の文字を求むるは、恰も雪をしらざる印度人に雪の詩を作らしむるが如く到底無用の沙汰なれば、遂に自ら古を為(し)…」

2 福澤の法思想  

  1. 福澤によるブラックストン解釈について-法における「歴史」と「理念」
    (『西洋事情二編』巻之一 「人間の通義」/『イギリス法釈義』抄訳)
    ※William Blackstone(1723-80), Commentaries on the Laws of England(1765-69) イギリスの法律家。オックスフォード大学教授(53~)後、王室顧問、国会議員、民事高等裁判所判事(70-80)
  2. 文明論と法論-徳義と法の役割
    1. その公法的側面(『学問のすすめ』『文明論の概略』など)       
      • 自然法/平等思想-反封建制の視点:人の平等性「権利通義の等しきものを言う」   
        1. 才徳・智徳・徳義と法の相関関係(文明社会における法の消滅)
        2.         
        3. 法治主義(⇔徳治主義・儒教)        
        4. 社会)契約関係の必要性(規範の自己定立⇔与えられた身分の不平等)
          治者被治者の自同性
        5. 国法遵守の原則(自力救済の禁止
      •       
      • 交詢社、私擬憲法草案(明治14.4)矢野文雄ら(イギリス型)とプロシア型憲法案(岩倉綱領・同年7月→明治憲法に)
           象徴天皇制(政治権力からの距離)⇔天皇統帥大使・行政大権
           議院内閣制(官民調和的)⇔内閣(行政権)の独立
           内閣の(議会への)連帯責任⇔国務大臣の(天皇への)単独責任制
          
    2. その私法的側面(熟読のすすめ)
      • 紛争解決手段への視点-訴訟自治的発想
        「訟を訴えるは訴へずして事を済ますの美なるに若かず」
        「自力社会」の設立(明治10.1/早矢仕有的を社主に設立)
        「人事万端の交渉を訴訟によって決する」ことへの懐疑
          →勝敗を決することへの経済的効果(入費・商談の継続)
          →主として民事事件においては「政府」の威光を借りた法」による解決をさける
        紛争の未然防止へ(→予防法学)
        ※「訴訟」を自律的に解決する交渉姿勢は市民社会を形成する重要な契機となる
        「法」の二元的なとらえ方:国家(政府)による法と市民間における法
        「私に自ら支配することをば知らずして、些細の間違いにても直にこれを政府に持出し、不理屈を述べ不条理を並べ…益政府の圧制を招ぐものと云ふべし…商人社会の面目を揚ぐるの日はなかるべし」
      • 国家(=官)主導の法典編纂作業への慎重論
        「条約改正、法典編纂」(明治22.7)
☆参考文献
手塚豊『福澤先生と法律』(福澤記念選書19)慶應義塾大学、1977
安西俊三『福沢諭吉と西欧思想』名古屋大学出版会、1995
松崎欣一「福沢諭吉の演説-英吉利法律学校開校式式辞・三田演説会最後の演説」慶應義塾福澤研究センター『近代日本研究20』、2003
岩谷十郎「福澤における条約改正論」『福澤諭吉著作集・第8巻(時事小言・通俗外交論)』慶應義塾大学出版会、2003
同上「法文化の翻訳者-ことばと法と福澤諭吉」『福澤諭吉年鑑30』福澤諭吉協会、2003

 

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