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慶應義塾OCW >>コース一覧 >> 法学部 >> 政治学基礎 I(2004春学期)
政治学基礎 I(2004春学期)

【テーマ03:権威】


■ホッブズの「リヴァイアサン」
・自然状態…ジャングルの掟「弱肉強食」より苛烈な暴力の支配

    競争心、相互不信、自負心  +
    「瞬間の飢えと渇きのみでなく、未来における飢えや渇き」をも癒したい人間のpowerへの渇望
    「継続的な恐怖と暴力による死の危険とが存在し、人間の生活は孤独で、まずしく険悪で残忍で、しかも短い。」

    この暴力の支配は成功するか?
    ホッブズ:人間の能力の平等がゆえに否
    力による服従の強制は、長期的に見て成功しない。

    ※ある支配が実効的で安定的なものであるためには、服従者の側がすすんでその支配関係を正当なものとして受け入れることが不可欠の条件となる。
      -->「権威」概念
■「権威」
    「他人のメッセージを、その内容を自ら吟味することなく、しかしすすんで受容する現象」(H・サイモン)

    「権力」:「上から下へ」の行使
    「権威」:「下から上へ」の付与

    「権威」の必要性
      権威の概念は片足を強制力に、もう片足を自由や自発性の中に踏み入れている。それは自発的服従と強制的権力の間を揺れ動く。
           <==>個人主義的、非対称的権力理論
       
      「銃口からは暴力は生まれても、権力は生まれない」(H.アレント)


    ■権力と自由
      権力関係=非対称的関係(コントロール・従属・不平等)との見方


    • ダール:BはAのせいで本当ならaを選ぶはずがないのにbを選んだ。
    • バカラック/バラッツ:BはAのせいで本当ならaを選ぶはずなのにaを選ばなかった。(この両者、特に前者はBの「行動」というアウトプットから観察可能)
    • ルークス:Aは選択肢を操作することによってBにbを選ばせた。(観察不可能)


    • これらの見方のすべてにおいて権力<-->自由
      ハンナ・アレントにとっての権力:「他人と協調しつつ行動しようとする人間の能力」

      ・Bは他者A~Fとの協調の中で、それ自身、社会的環境(意味的世界)の中にある選択肢群の中からaを選んだ(aはBの効用を必ずしも極大化する選択肢ではない)。
      権力=自由
        アレントの自由
          1.自由は私的領域にあるのではなく、公的領域にある。
          2.自由は「自然」には存在しない(人為としての自由)。
          3.自由は個人主義(ミーイズム)とは無縁である。

      権力と権威--その法的起原
        ローマ法におけるauctoritas
          「auctoritasは助言以上のものであり、命令以下のものである。それは正当に服従を拒むことのできない助言である。」 モムゼン

    ■auctoritasの三用法
      語源:augere「増す」
      ・追加的
      通常の法的処罰に追加された、取引に対する特別の裏付け、保証
      auctoritas domini:通常の強制的命令権に追加された、奴隷に対する主人の意志の賦課

      ・個人的
      助言、意見への賦課。それを語った者が、それらを法や真理として受け入れさせ、聞き手をその助言、意見の拘束力以上に強制する。

      ・創始的
      情報、意見、教義の正当な出所。Authorを確認することが法的資格や道徳的資質と無関係に他者の服従の根拠となるとする観念。

    ■権力と権威--政治神学
      古代社会:宗教的権威を有するものが同時に政治的な支配者(政治神学)
      *神意の伝達者・解釈者としての神官による、真の支配者たる神の支配者代行機能
      *権力と権威の一元性

    中世ヨーロッパ
      キリスト教共同体Res Publica Christiana
        世俗的権力(領封国家の国王の支配領域)と宗教的権威(ローマ教会の精神的統率領域)という二つの中心を持つ楕円の構造体

      二元的構造の安定要因と不安定要因
      当初優位に立っていた教皇の「権威」も、十字軍の失敗や貨幣経済の浸透によって十四世紀頃には急激に衰退

      近代:脱宗教化、世俗化の時代
      権威はより強化され、神学的思考様式は保持されたまま、それらが世俗権力と結合
      日本における天皇制と国家神道 (丸山『日本の思想』参照)

    ★参考テキスト
    萩原能久「ラビリンスワールドの政治学」、日本評論社『法学セミナー』(全12回連載より「ケンシロウに伝授しておきたいこと」)
    L.クリーガー他『権威と反抗』(叢書ヒストリー・オヴ・アイディアズ)、平凡社
    福田歓一『近代の政治思想』、岩波新書
    なだいなだ『権威と権力』、岩波新書
    C.シュミット『政治神学』、未來社
    丸山眞男『日本の思想』、岩波新書

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