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政治学基礎 I(2004春学期)

【テーマ08:議会制民主主義論】


■間接民主制は「民主的」か?

    ‥‥「万人の支配」ならぬ寡頭制 <-- ルソーやマルクスの批判
      ルソー『社会契約論』
        「イギリスの人民は自由だと思っているが、それは大まちがいだ。彼らが自由なのは議員を選挙する間だけのことで、議員が選ばれるやいなや、イギリス人民は奴隷となり、無に帰してしまう。その自由な短い期間に、彼らが自由をどう使っているかを見れば、自由を失うのも当然である。」
      マルクス『フランスの内乱』
        「普通選挙は、3年ないし6年に一度、支配階級のどの成員が人民を代表し、かつ踏みにじるかを決定する」ものにすぎない。
誰が「奴隷」か?人民が代議士の奴隷なのか、代議士が人民の奴隷なのか?

■議会制をめぐる自由主義対民主主義
    シュミット『現代議会主義の精神史的地位』
      議会主義、すなわち討論による政治に対する信念は、自由主義の思想圏に属し、民主主義に属するものではない。
  国家 代議士 主導理念 政党制 民衆観
自由主義的
議会 
権力機構 自由委任 討論と公開性 必要悪 教養と財産
民主主義的
議会
共同体 強制委任 国民主権 議員の制御 非合理的大衆

      バーク「ブリストル演説」
        「代表者の偏らない意見、成熟した判断、啓蒙された良心を諸君のために犠牲にすべきではない。・・・諸君の代表は、諸君に対して勤勉でなければならないだけでなく、彼の判断力を行使しなければならない。もし彼がそれを諸君のために犠牲にしたいならば、諸君に奉仕するのではなくて、裏切っていることになるだろう。」

    「抵抗権」の制度化としての議会
    「主権」に歯止めをかけるのは誰か:「最強より強い者」という概念の論理矛盾
      --> 弱者集団に最強者を指名させ、その者に無制限な立法権という、最強者の地位と力を与えるが、弱者集団をないがしろにするとその地位を失うという制度。

■議院内閣制
    行政部である内閣が、立法部(議会)を基礎として存立し、議会に対して連帯して責任を負う内閣。
    (ゆえに「政党内閣制」、「責任内閣制」)
    「不信任vs.解散」
    これは権力分立論ではなくむしろ「権力融合」の論理
    バジョット『イギリス憲政論』
      政治の「尊厳的部分」:政治のシンボル的・付随的役割・・・君主や上院という「貴族的要素」
      政治の「機能的部分」:政治の実効的・中心的役割・・・立法権と行政権の一体化
    首相の強力なリーダーシップで安定的効果的政策・・・巨大権力の暴走を無想定

    イギリス型
      行政部優位<-- 「真正な議院内閣制」(R. Redslob)
      1.下院多数党党首が首相 <-- 総選挙が実質上の首相選択選挙
      2.首相に閣僚任命・罷免権
      3.内閣が議会に対して責任、首相は解散権
      4.首相の判断で下院解散 <-- 民意の反映・責任政治の徹底
      5.二大政党制のため単独内閣
フランス型
      立法部の優位・・・フランス第三・第四共和制
      1.下院解散なし。任期中の閣僚更迭・総辞職
      2.閣僚任命に議会の承認が必要、閣僚は議会の影響下
      3.閣僚は政府に連帯責任、自己に単独責任
      4.連立内閣がおおく、内閣の一体性弱い
      5.政党間の党利党略で合従連衡、政変多し

    大統領制=二元的代表民主制
      ただし、ドイツやイタリアなどは議院内閣制のうえに大統領がおり、この場合は国家元首として儀礼的。象徴的役割。フランスや韓国の場合、首相・閣僚任命権、議会解散権、非常事態宣言、国民投票の実施などの強大な権限。
    大統領…アメリカの場合
        行政部の長    + 国家元首
        議会に対して教書 + 拒否権(その場合、上下院で2/3で再可決)
                  + 統帥権(最高司令官)
        行政各部の長官は大統領に任命され、議会に責任を負わない。
        各部長官や閣僚は、大統領のアドヴァイサー。
        大使、公使、最高裁判事、閣僚には上院の助言と承認。
        アメリカに特有なスポイルズ・システム + 能力主義
        条約締結も事前に上院の2/3の承認

■大統領と総理大臣
      議会との関係
      議会の解散権
    第7条解散・・・「伝家の宝刀」
    第69条解散
      閣僚(大臣)との関係
      「行政権」を持つのは総理ではなく、内閣

■参議院:歴史的遺物or「良識の府」
    一院制の利点
      効率的(特に利害対立、国内少数民族問題がないばあい)スウェーデンは二院制から移行
    二院制の利点
      複数の観点、慎重審議:異なる代表原理と選出原理
    第二院の選出原理
    1.連邦型
      ・(連邦制の場合)構成共和国、州、少数民族、
      ・アメリカ(スイス、ブラジル):人口は無視した各州同数の定数配分
      ・オーストラリア:州議会による間接選挙
      ・ドイツ:各州政府の構成員
      ・フランス:国民議会議員と県議会議員の全員、市長村議会議員の代表者に投票権。県単位で選出
    2.非公選型(貴族院):
      ・イギリス:衰退しつつある。イギリスの場合、上院は形骸化し、最高裁判所の機能のみ
    3.公選型
      ・日本:「良識の府」?もともとは政党基盤を持たない学識経験者
      ・日本:任期六年。全国区比例代表96名、146名都道府県単位。半分づつ交代。解散なし
      ・アメリカ型の「地域代表」ではない!
      ・どのような「複数の観点」がそこにあるか?
      ・参議院における議員定数不均衡?
        衆議院における議員定数の不均衡が1:3を越えるのは不平等で違憲であるとの判決を下してきた最高裁は、参議院における議員定数の不均衡を、多少の格差は立法裁量権の範囲内として、一貫して合憲判決を下してきた。しかし1996年に、1:6.59の格差について、初の違憲判決が下された。この意味は何か?
        【参考】萩原能久・慶応大教授(政治哲学)の話(朝日新聞2000年1月28日名古屋版)
        このコメントは衆議院の定数を20削減する定数法案の衆院通過に対してなされたものであり、掲載された原稿では「ですます調」を改められている。
        そもそも国会議員の適正定員数なるものなど存在しません。「政治家が多すぎる」という国民感情があるとすれば、それは「『無能な政治家』が多すぎる」ということであって、議員の適性資質の方こそが問われているのでしょう。
        「国会のリストラ」が大義名分ですが、機構・制度のなかのどこが不要な部分なのか検討もせず、お茶をにごしたような数の人員削減をやるリストラなどやらない方がましです。リストラとは制度を見直し、金と時間の無駄遣いをやめること。こうした人数あわせのような非本質的問題で国会空転を招くことこそ、無駄の極みでしょう。
        一番いけないのは、ちょっと制度をいじくって、それで改善したことにするアリバイ的なやり方です。例えばスウェーデンのように参議院の廃止ぐらいまで視野にいれた議論(これには憲法改正が必要ですが)をしないかぎり、それはリストラでも改革でもなく、有権者のご機嫌取りと批判されて当然です。
    4.職能代表

★参考テキスト
萩原能久「ラビリンスワールドの政治学」、日本評論社『法学セミナー』(全12回連載より 「最強の猛獣を飼い慣らす方法」)
J.J.ルソー『社会契約論』、岩波文庫
K.マルクス『フランスの内乱』、岩波文庫
E.バーク「ブリストル演説」、『エドモンド・バーク著作集2』、みすず書房
W.バジョット『イギリス憲政論』(中公バックス『世界の名著 バジョット・ラスキ・マッキーヴァー』)、中央公論社
J.S.ミル『代議政治論』、中公バックス『世界の名著 ベンサム・ミル』
福田歓一『近代民主主義とその展望』、岩波新書
K.v.ウォルフレン『日本・権力構造の謎』、早川書房
C.シュミット『現代議会主義の精神史的地位』、みすず書房


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