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慶應義塾OCW >>コース一覧 >> 法学部 >> 政治学基礎 I(2004春学期)
政治学基礎 I(2004春学期)

【テーマ09:現代の民主主義理論】

■ダールの「ポリアーキー」
参照: R.ダール、『ポリアーキー』、三一書房
  

    自由化(公的異議申立て<--アメリカ型「抵抗原理」指標)と包括性(参加<--フランス型「同一化原理」指標)
    民主化の多様なコース
    文化的対立が少ない社会に成立しやすいポリアーキー
ポリアーキーに最も有利 ポリアーキーに最も不利
I 歴史的展開 競争政治が包括性に先行する 包括性が競争政治に先行する
閉鎖的抑圧体制から包括的
ポリアーキーへ近道をとる
II 社会経済的秩序:
A. ~への接近
    1. 暴力
分散あるいは中立 独占
    2. 社会経済的制裁
分散あるいは中立 独占
B. 経済形態
    1. 農業
自由農民 伝統的農夫
    2. 商工業
地方分散 中央集権
III 社会経済的発展段階 高い:国民一人あたりの
総生産$700 ̄800
低い:国民一人あたりの
総生産$100 ̄200
IV 平等と不平等
    1. 客観的
低い、あるいは
平衡的分散的不平等
高い:蓄積的で極端
    2. 主観的:相対的剥奪感
低いあるいは減少 高いあるいは増大
V 下位文化的多元性
    1. 量的に
低い 高い
    2. もし著しい
    あるいは高い場合には
どれも多数派ではない、
どれも地域的でない、
どれも明白に政府の外に
ない、相互保障
一つが多数派
いくつかが地域的
いくつかが恒久的対立
相互保障がない
VI 外国権力の支配 弱いあるいは一時的 強く持続的
VII 政治活動家の信念
    1. ポリアーキーの諸制度
    が正統である。
yes no
    2. 一方的権威のみが
    正統である。
no yes
    3. 主要問題を解決するのに
    ポリアーキーは効果的である。
yes no
    4. 相手を信頼する。
強い 弱い
    5. 政治的関係は
       厳密に競争的
       厳密に協調的
       協調的競争

no
no
yes

yes
yes
no
    6.妥協は必要であり望ましい
yes no
ダール『ポリアーキー』、240頁より


■レイプハルトの「多極共存型民主主義」
    英米型の「二大政党制」は安定し大陸型の「多党制」は不安定なデモクラシー?
    -->オランダ、ベルギー、スイスなどの小国研究
    言語的、民族的、宗教的、文化的亀裂にもかかわらない安定性…指導者たちの慎重な配慮(エリートの協調性)
レイプハルトによるデモクラシーの類型
社会構造
同質的 多元的
エリートの
行動
協調的 脱政治型 多極共存型
敵対的 求心型 遠心型

    多極共存型の特性
      1.grand coalition <--多党性と連立与党
      2.mutual veto <--全会一致
      3.proportionality <--比例代表制
      4.segment autonomy <--連邦制

■リンスの権威主義政治体制 デモクラシーと全体主義のあいだ(ポリアーキーへの途上?)
    1.限定された多元性
       (閉鎖的抑圧体制の一元性、ポリアーキーの多元性)
    2.メンタリティ
       (閉鎖的抑圧体制の包括的イデオロギー、ポリアーキーの多元的思想)
    3.広範さ、強力さを欠く動員
       (閉鎖的抑圧体制の無参加、ポリアーキーの広範な動員)
      参照:ファシズムの特色
      1.指導者原理による国家と社会の再構成
      2.民族共同体解体者への暴力の肯定
         ・民族性、民族共同体の強調
         ・強力な権力国家
         ・その維持・発展のための戦争の肯定・賛美
      3.反社会主義、反自由主義、反国際主義
      4.そのイデオロギー:生の哲学と社会ダイヴィニズム
■権威主義政治体制以後
シュミッター/オドンネル『民主化の比較政治学』



■ラディカル・デモクラシー
    1.参加民主主義 (B.バーバー,S.ウォリン)
    2.審議的民主主義 (J.ハーバーマス、K.O.アーペル)
    3.社会民主主義 (C.B.マクファーソン、A.ギデンズ)
    4.闘技的民主主義 (W.E.コノリー、E.ラクラウ、C.ムフ)
    5.差異の政治 (I.M.ヤング、W.キムリッカ)
    ラディカルデモクラシーの主張
      現代民主主義(利益誘導型or大衆民主主義)の危機と幻滅
      多数者の専制とエリートの凋落
      人間の孤立と共同体の崩壊
      自由民主主義と「歴史の終焉(F.フクヤマ)」へのAlternative
      -->永続革命としての民主主義(丸山眞男)
    民主主義=「国民主権」の神話
      神学的=政治的イデオロギーによる民主主義の基礎付けの放棄
      vox poluli, vox dei
      -->「すべての人々を人間として扱うこと」
      意見の複数性
      政治の多元性(国家や選挙のみが「政治」ではない)
      非決定性(漸進的・個別的な闘争による平等という普遍的原理の追求)
      「根源的で多元的な民主主義に向けた企図は、何よりもまず、等価的で平等主義的な論理に基づいて最大限の領域の自立化を求める闘争にほかならない」  (ラクラウ/ムフ)
        【萩原コメント:民主主義の非正当化主義的転換に向けて】
        民主主義=「コンセンサス・合意形成}、「多数決」?
        コンセンサスや、説得など、論理的観点から見れば、独断的断言(およびその思考体系)が相互に両立したことの、そして両立しない部分は放棄するか、棚上げしたことの相互確認にすぎない。そのことでその独断が正しいことの証明にはならない。むしろ民主主義の価値は「議論をする」ことそれ自体に、またその議論による差異の確認と承認にある。
        政治の場において、もちろん決定はなされなければならない。しかしその「決定」は真理でも正義でもない。(だからこそ絶対化されてはならない。)むしろ、その「決定」によって、犠牲を強いられた人々、多数決に踏みにじられた少数派の意見が記憶され、次の決定において配慮されなければならない。それこそが正義であり、「討論の政治」としての民主主義の価値である。


★参考テキスト
R.ダール『ポリアーキー』、三一書房
A.レイプハルト『多元社会のデモクラシー』、三一書房
J.リンス『権威主義政治体制』、岩波現代選書
P.C.シュミッター/G.オドンネル『民主化の比較政治学』、未來社
千葉眞『ラディカル・デモクラシーの地平』、新評論
『思想』第867号(ラディカル・デモクラシー特集、1996年9月)
T.デイヴィッド編『ラディカル・デモクラシー』三嶺書房



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