慶應オープンコースウェア
 

course_navi

Google
慶應義塾OCW >>コース一覧 >> 法学部 >> 政治学基礎 I(2004春学期)
政治学基礎 I(2004春学期)
【テーマ10:戦争論】

■政治学と戦争
    第二次世界大戦に生じた政治学への反省
    平和を対象と目標とする自由の科学としての政治学再構築の機運
    「政治」そのものを「戦争」とのアナロジーでとらえてきた近代政治学
      「紛争こそは政治の本質である。政治に従事する人々は、皆一種の闘争に従事している。弾丸(bullets)の戦でない場合にも投票(ballots)の戦に、軍隊の戦でない場合にも修辞の戦に、戦略の戦でない場合にも説得の戦に従事しているのだ」
      丸山眞男『政治の世界』におけるQ.Wrightよりの引用
    ホッブズにとっての政治:
    自己の欲求を追求し、他人に優越しようとする情念の持ち主たる人間が、限られた量の財をめぐって、繰り広げる「万人の万人に対する戦争(bellum omnium contra omnes)」という「自然状態」と、その克服として「人間に対して狼である人間(homo homini lupus)」を罰の恐怖によって震え上がらせ、法の遵守に強制する国家
    ウェーバーの「政治」の定義:(『職業としての政治』、9頁)
    政治とは、国家間であれ、一国家内の、国家に含まれる人間集団間であれ、権力の分け前に与ろうとする努力であり、権力の分配に影響を及ぼそうとする努力である。

    ウェーバーの「権力」の定義:
    ある社会関係の中で相手の抵抗を排除してまで自己の意志を貫徹させる可能性
    クラウゼヴィッツの戦争の定義:(『戦争論』、上巻29頁)
    戦争は一種の強力行為であり、その旨とするところは相手に我が方の意志を強要するにある。
    異なる手段による政治の継続?
    近代政治学にとっては「戦争とは異なる手段による政治の継続である」(クラウゼヴィッツ)なのではなく、政治こそが「異なる手段による戦争の継続」とみなされてきたのである。
    カール・シュミット:「政治的なもの」の指標
    戦争は政治の「例外状況」ではなく、まさに常態では覆い隠された政治の本性をかいまみせる政治の本質。
    「国家」概念の前提になる「政治的なもの」に固有の標識としての「友と敵」の区別 敵:抗争中の相手たる人間の総体を示す公的な概念
    「物理的殺戮の現実的可能性とかかわり、そのかかわりを持ち続けること」

    国家にのみ認められた「交戦権」
    相手国の国民(外敵)に対する殺人の容認と自国民(友)に対する死の覚悟の要求 ‥‥対外的
    反国家的革命勢力(内敵)の弾圧 ‥‥対内的
    これに対して一切の利害対立も憎悪も存在しない人間の平和的共存状態の「ユートピア」を構想できるか?

■政治学の夜闇
    戦争の定義
      最広義の戦争:別個の、しかし同種の存在間の暴力的な接触
      現代の戦争:複数の敵対する集団に、武力による闘争を行うことを同等に認める法的状態
                          Quincy Wright, A Study of War
    西谷修の戦争論
      戦争:言葉による議論から最も遠いところにある<生存>の<全体>に関わる出来事、有無を言わさずすべてを呑み込んでしまう熱い<夜>という<現実>
          <--理性にはとらえきれない
    戦争という夜闇
      この「無」、この「夜闇」は、昼のものである理性が<全体>の形成にあたって、それを担った当のものを<無>として、存在しないものとして排除してきた帰結。
      単なる手段として「戦争」を利用しようとするや手段として投入された戦争はその本性に従って、敵の完全な打倒という戦争自体の自己目的に転化し、世界を戦争化させる。
    核兵器
      <世界の戦争化>の象徴。
      「使えない兵器」:残酷な兵器?全面的破壊という戦争の「欲望」をむきだしにしてしまう兵器
    アウシュヴィッツとヒロシマ:その二重の恐怖
      全体化した戦争の中で、<無>に帰してしまった<世界>
      主体性をまったく剥奪され、それでも消滅することなく存在することを強いられた人間の「死の不可能性」。
      「アウシュヴィッツのあとで詩を書くことは野蛮である。」(Th.アドルノ『プリズム』)
      「アウシュヴィッツのあとで人間はまだ生きることができるか」(Th.アドルノ『否定弁証法』)
    理性は戦争を阻止できるか?
    フロイト『戦争はなぜ』:「エロス」と「タナトス」
    20世紀の国家と戦争: 戦争装置としての国家の変質
      ・機械化
      ・総力戦化
      ・大衆化
    それにもかかわらない19世紀的でビスマルク的な国際秩序観・・・Balance of Power


■「古い戦争」と「新しい戦争」

17、18世紀 19世紀 20世紀前半 20世紀後半 新しい戦争
政治体制
の種類
絶対王政国家 国民国家 多民族連合
多民族国家
帝国
ブロック 脱国家的機関
国民国家
地方政府
戦争目的 国家理性
王朝間の紛争
国境の確定
国家間紛争 国家間紛争
イデオロギー闘争
イデオロギー闘争 アイデンティティ・
ポリテックス
軍隊の形態 傭兵
職業軍人
職業軍人
徴兵制
総動員化 科学・軍事エリート
職業軍隊
準軍事組織
犯罪組織
警察部隊
傭兵集団
非正規軍
軍事技術 小火器
防御作戦
包囲攻撃
鉄道・電信
迅速な兵力動員
大規模火力
戦車・戦闘機
核兵器 先端技術利用の小型武器
現代通信技術
軍事経済 徴税・戦時国債 行政・官僚機構拡大 総動員経済 軍産複合体 グローバル化された
戦争経済
M.カルドー『新戦争論』(岩波書店)をもとに作成


■War made the State and the State makes war
    ホッブズ対ルソー?
    「自己の役に立つものを見てとるに十分な理性と、本人自身の幸せを求めるに十分な勇気」というルソーの想定。
    それでも平和が実現しないとするならば、「それは人々に分別が足りないからだし、狂人たちの真中にあって思慮分別をもつことが、いわば狂気」だからである。
    力と狂気、言葉と理性
    出発点としての「いのちの保障」

★参考テキスト
萩原能久「ラビリンスワールドの政治学」、日本評論社『法学セミナー』(全12回連載より「ヒロシマのあとで政治学するのは野蛮である」)
萩原能久 「戦争の人間的起源」、『三色旗』1999年七月号
萩原能久「21世紀の平和思想」、日本平和学会編『平和研究』第26号、2001年
丸山眞男『政治の世界』、お茶の水書房
Th.ホッブズ『リヴァイアサン』(中公バックス『世界の名著 ホッブズ』)、中央公論社
M.ウェーバー『職業としての政治』、岩波文庫
K.v.クラウゼヴィッツ『戦争論』、岩波文庫
C.シュミット『政治的なものの概念』、未來社
Q.Wright, A Study of War, The University of Chicago Press
西谷修『戦争論』、岩波書店
西谷修『夜の鼓動にふれる』、東京大学出版会
Th.アドルノ『プリズム』、法政大学出版局
Th.アドルノ『否定弁証法』、作品社
A.アインシュタイン&S.フロイト『ヒトはなぜ戦争をするのか?』 、花風社
S.フロイト「ある幻想の未来」、『フロイト著作集3 文化・芸術論』、人文書院
入江昭『二十世紀の戦争と平和』、増補版、東京大学出版会
M.カルドー『新戦争論』、岩波書店
ジョン・キーガン『戦争と人間の歴史』、刀水書房
J.J.ルソー「戦争状態は社会状態から生まれるということ」および「永久平和論抜粋」『ルソー全集第四巻』白水社
J.J.ルソー『社会契約論』、岩波文庫



ページトップへ>>

 
←前へ
講義一覧に戻る
次へ→

コーストップへ>>

慶應義塾OCW トップへ>>

Creative Commons License
本サイトのコンテンツは、 クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。