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政治学基礎 I(2004春学期)

【テーマ13:平和】

■平和の概念~比較文明史的観点から

重点が置かれた意味 神意/正義  繁栄   秩序  心の静穏
古代ユダヤ教
shalom
シャーローム
ギリシァ
eirene
エイレーネ
ローマ
pax
パックス
中国(日本)
和平
  平和
インド
santi
シャーンティ
石田雄『平和の政治学』、35頁


■「平和」:戦争のない状態?
    1.戦争
    2.戦争の危険(peacelessness)
      一見したところ暴力の形を取らない貧困、不平等、差別、抑圧、疎外の存在。これは非対称的社会関係、不均等な構造から生み出される。
      exploitation(搾取) / penetration(浸透)fragmentation(分断) /marginalization(辺境化)
    3.(積極的)平和

■「積極的平和」の概念 ‥‥「構造的暴力」の不在
    戦争のない状態としての「平和」‥‥消極的平和概念
    これは「戦争」ではなくとも、「平和」でもない。構造的暴力のない状態こそ真の平和‥‥積極的平和概念
    暴力:「ある人に対して影響力が行使された結果、彼が現実に肉体的、精神的に実現しえたものが、彼の潜在的実現可能性を下まわった場合、そこに存在する」もの。
       <==> ダールの「権力」
          暴力の類型         帝国主義の構造



    封建的中心-周辺構造(冷戦期)   封建的中心-周辺構造(ポスト冷戦期)
    



■カントの永久平和論
    「永遠平和のための予備条項」
      1.将来の戦争に対する材料を密かに留保して結ばれた平和条約は、決して平和条約とみなされてはならない。
      2.独立して存在しているいかなる国家も、相続、交換、買収あるいは贈与によって、他の国家に取得されてはならない。
      3.常備軍は、時とともに全廃されるべきである。
      4.国家の対外紛争に関連して、いかなる国債も起こされてはならない。
      5.いかなる国家も、他国の憲法体制および政権に暴力をもって干渉してはならない。
      6.いかなる国家も、他国との戦争において、将来の平和に際して相互の信頼を不可能にせざるをえないような敵対行為を決してしてはならない。例えば、暗殺者や毒殺者の雇用、降伏条約の破棄、敵国における反逆の煽動など
    「永遠平和のための確定条項」
      1.各国家における市民的体制は共和的でなければならない。
           -->デモクラティック・ピース論
      2.国際法は、自由な諸国家の連盟の上にもとづくべきである。
           -->「国際連盟」型国際機構
      3.世界市民法は、普遍的な友好をもたらす諸条件に制限せられるべきである。
           -->相互依存論

■デモクラティック・ピース論
    民主国家(同士)は戦争をしない?
       イデオロギーとしてのデモクラティック・ピース論
      1.「戦争」の規定:「大規模で制度化された、死者を伴う暴力」-->アメリカの「警察力行使」は戦争とされない
      2.自由民主主義体制の平和、第三世界の暴力<==>J. Galtungの「構造的暴力論」
      3.平和と民主主義の「内と外」


■国際連盟と国際連合

連盟 連合
戦争概念 使用 不使用
軍事的制裁 なし あり
制裁決定 加盟国の判断 安保理
大国との関係 米ソの不在 拒否権
    連盟の制度的欠点(と言われているもの)は本当に欠点か?

■相互依存論

   主権国家システムとしての国際社会
   ウェストファリア体制
   国民国家の揺らぎ
   多国籍企業・ボーダーレスエコノミー(経済)
   EU、非政府組織(NGO,NPO)などの新たな枠組み(政治)
   インターネットなどの国境を越えた文化 (社会)

   「民族」というパンドラの箱

      相互依存論
          安全保障は軍隊のみによるものではない
          相互依存(協調)か、従属化(対立)か

■日本国憲法と21世紀


   日本国憲法の三大原則
     1.基本的人権の尊重(自由主義)
     2.国民主権(民主主義)
     3.恒久平和主義

   一度も実践されてこなかった平和主義を「主体的に」実践する日本国民の義務


■未来を作っていく責任
    われわれが有する最大の責任は未来を作っていくことである。そのためには過去の教訓から学び、何を反省し、それをどう生かしていくかが重要となる。
    また人間は、自らの為したことにのみ責任を負うのではなく、自らの為さざること、不作為にも責任を負いうる。(cf. ヴァイツゼッカー演説『荒れ野の40年』)

      日本国憲法前文
      日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。・・・

      国際連合教育科学文化機関(UNESCO)憲章前文より
      戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。
         相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。
         ここに終わりを告げた恐るべき大戦争は、人間の尊厳、平等・相互の尊重という民主主義の原理を否認し、これらの原理の代わりに、無知と偏見を通じて人間と人種の不平等という教義をひろめることによって可能にされた戦争であった。
         文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、且つ、すべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神をもって果たさなければならない神聖な義務である。
         政府の政治的及び経済的取極のみに基く平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって、平和は、失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かれなければならない。



★参考テキスト
萩原能久「民主主義の非暴力化をめざして」(藤原修・岡本三夫編『いま平和とは何か』、法律文化社)
石田雄『平和の政治学』(絶版)、岩波新書
J.ガルトゥング『構造的暴力と平和』、中央大学出版部
J.カルトゥング『90年代日本への提言』、中央大学出版部
I.カント『永遠平和のために』、岩波文庫
B.ラセット『パクス・デモクラティア』、東京大学出版会
水島朝穂『武力なき平和』、岩波書店



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